サンショウウオの餌用の虫を捕まえに、近所の棚田へ行ってきましたが…。
余計に餌を食う、しかもサンショウウオに比べると遥かに大食漢の生き物を飼うハメになってしまいました(~_~;)
声はすれども姿は見えずの典型、シュレーゲルアオガエルなのですが、今回はその辺りの顛末を…。
脊索動物門 > 脊椎動物亜門 > 両生綱 > 跳躍下綱 >
無尾目(カエル目)> ナミガエル亜目 > アオガエル科 > アオガエル属 > シュレーゲルアオガエル
某所の里山へ、コオロギやバッタの幼虫、ツマグロヨコバイやウンカなどの虫を探しに行きました。
食べ頃(?)の虫たちも色々といましたが、この時期(5月末)の水田は両生・爬虫類の宝庫で、特にカエルやヘビをたくさん見ることが出来ました。
カエルは、ざっと見てニホンアマガエル、ダルマガエル、ニホンアカガエル、それと種類は判らないものの無数のオタマジャクシ…。
ヘビは、月並みな種類だけでしたが、シマヘビやヤマカガシを数匹見ることが出来ました。アオダイショウは見ませんでした。あれはむしろ、もっと人里にいますかね?
目的は虫探しでしたから、カメラを持って行かなかったことが悔やまれます。また家庭の事情で、息子(5歳) を伴っての採取でしたから、雑木林の奥へは行かず、しかも昼日中でしたから(幸か不幸か)マムシを発見することは出来ませんでした。
もちろん、これまた昼日中ですから、カエルの大合唱という訳にはいきません。今や地域によっては希少種となったダルマガエルはわんさかいても、みんな黙っていて、人が来れば跳んで逃げるだけ。しかし、田圃の畔や草むらから、コロロ・コロロ・カッと鳴き声だけ聞こえてくるカエルがいます。
声の主はシュレーゲルアオガエル。
こんな名前でも我国の固有種で、普段は森や林の樹の上(むしろ薮や草むらといった方が近いが)で生活しています。
この時期(繁殖期)には田圃等へ降りてきますが、草の陰に隠れていて、雄も石の下や地中で鳴きます。産卵も主に土中で行われるため、鳴き声は頻繁に耳にしても姿を見ることは稀です。
捕獲が難しい上に、本州・四国・九州の何処にでもいる珍しくもないカエルというのが幸いしてか、モリアオガエルの様にネットオークション等で高値取り引きされることもない普通種です(せいぜい200円/匹ぐらい)。だからと言って、繁殖地を掘り返して荒らしまくっても良いという程、減っていない訳ではないので、しかもそれをする以外に捕獲の機会は少ないので、声だけを楽しむつもりだったのですが…。
写真を見ればお解りの通り、このカエルは我家での飼育下でのシュレーゲルアオガエルです(~_~;)
私自身、滅多に見ることのないカエルなので、息子(5歳)ごときには発見さえ出来るはずがないと多寡をくくっていたのですが、通りかかった時にたまたまヤマカガシに追われて、あろうことか息子の靴の上に姿を現した雄です。
その後、我家に持って帰ることになった経緯は(と言うよりはそれ以前からの経緯で、話せば長くなるので)省略します(^_^;)
シュレーゲルアオガエルとアマガエル、あるいはモリアオガエルとの識別方法は、よく話題になります。この3種は分布域が重なり、また繁殖期もほぼ同時期ですから、田圃で見掛けた“緑のカエル”というだけでは何ガエルなのかが判らないからでしょう。
簡単な見分け方を言いますと、アマガエルとアオガエルでは、顔の形が違う(アオガエルは吻が尖っています)のと、アマガエルには鼻から目を通り鼓膜にかけて黒い線が入っていることで見分けがつきます。
モリアオガエルとシュレーゲルアオガエルでは、まず大きさが全く違いますが、雄のモリアオガエルと雌のシュレーゲルアオガエルでは大きさに顕著な違いがありません。ですから(鳴いているところならともかく)雌雄が判らない場合には、眼の虹彩の色で見分けます。モリアオガエルの虹彩が赤っぽいのに比べ、シュレーゲルアオガエルでは緑がかった金色に見えます。
ただ、これも個体差(または個人の主観の差)があるそうですから、皮膚の感じも見てください。きめ細かくツルッとした感じならシュレーゲルアオガエル。ツブツブが大きくザラッとした感じならモリアオガエルです。
ただ、写真での同定ならともかくフィールドで観察していて、この青いカエル3種を見間違うことは、滅多にあることではないと私は思っています。何故なら、アマガエルならどこにでもいますが、シュレーゲルアオガエルは、それなりの棲息地に行かなければ(行っても)中々眼にする機会はありません。それなりの場所へ行く様なカエル好きの人が、アマガエルとアオガエルを見間違うとは思えないのです。
またモリアオガエルに至っては、それこそピンポイントで“モリアオガエルの棲息地”へ行かなければ、見ることはできないはずです。我々の様な一般人が、普通に歩いていて出会うことはまずありませんし、研究者や保護活動をしている人が見間違うことはないでしょう。
もっとも私の(シュレーゲルアオガエルのケースの)様に“別の生き物を探していて遭遇”するケースもあるかもしれませんから、大ざっぱな見分け方ぐらいは知っておいて損はないと思いますが(^_^;)
これは家で観察していて気付いたのですが、実は、このシュレーゲルアオガエル。左前肢の人さし指(と言うかどうかは微妙)の先っぽがありません。ちょうど吸盤になってる辺りを欠損しています。
無尾目の成体は有尾目の様に、千切れた部分が再生することはありませんから、このカエルはずっと指を半分欠いたままで生きていかなければなりません。
ただし、連れてきた当日からアチコチに貼り付いて飼育ケース内を探索し、しかもバカほど餌を食い、太い糞を撒き散らしていますから、本人(本蛙?)は特に不自由さは感じていない様です。
私が気になるのは、欠損したことではなく、その部位です。カエルの天敵、ヘビや鳥や大型水棲昆虫等の捕食方法から考えて、カエルがたった一本の指の先だけを欠損するというのは非常に困難です。欠損しているのが小指の先ならまた他の状況も考えられます(って、んな訳ねぇだろ!)が、実害のない場所を器用に欠損させているということはトー・クリッピング(Toe
Clipping)の可能性が考えられます(でも指1本だけというのも妙か? 繁殖行動にも支障を来さない様にという優しい研究者だったのかも)。
しまったなぁ。分布調査か何かのマーキング個体を持って帰ってきてしまったかも(~_~;)
まあ、でも、あのまま私が通りかからなかったらヤマカガシに食われていた可能性は高いし、捕まえたのは息子でして、カエルにとってはヤマカガシやマムシなんかより人間の5歳児の方がよっぽど恐いのは一般だし(^_^;)
と言うか、標識再捕法でも天敵に捕食されたり、もっと恐い5歳ぐらいの子供によって為されるロスは誤差の範囲内だろうし、「増えてる」という報告よりも「減ってる」という報告の方がやり甲斐あるだろうし…。
等々、ゴチャゴチャ言い訳をしつつ、そもそもシュレーゲルアオガエルなんて、調査をする必要があるのでしょうか? 何のため?
環境だか農林だか水産だかどこだか管轄は知りませんけど、そういう部課のお偉い方々にプレゼンするには、確かに希少な生き物の分布グラフ他、数字的な裏付けが必要かもしれません。ただシュレーゲルアオガエルなら、棲息地の棚田や雑木林がある限り、そしてそこに外来性の捕食動物や二足歩行のケダモノが恒常的に入り込まない限り、普通に棲息し続ける生き物ではないですかね?
私は、学術的なことや政治向きのことは知りたくもないし、関わり合いにもなりたくありませんが、エリートさんたちがプロジェクター囲んで鳩首協議しているぐらいなら、お偉いさんを(芸者もコンパニオンもいませんがと断わった上で)棚田周辺の視察に引っ張り出せば、一発で理解できると思うのですがねぇ。
今、あなたの管轄区域内で何が起こっているのかって。
何なら、私が案内しましょうか?
シュレーゲルアオガエルの蘊蓄はデカペディアのカエル/シュレーゲルアオガエルをご覧ください。