ここは、私がよく行く里山で、一面に棚田が広がり、後背には雑木林があり、雑木林の中には静かに水を湛える池があり、田と田を繋ぐ水路こそ一部コンクリートや塩ビパイプになっていますが、冬でも田圃には水が残っています。
春先には、あちこちの田でニホンアカガエルが産卵し、初夏辺りからシュレーゲルアオガエルの声がそこここの草叢から響き、梅雨前後にはトノサマガエルやダルマガエルが飛び跳ね、池の上をギンヤンマが飛び交い、田圃の中をノソノソとイモリが歩き、無数のシマヘビやヤマカガシがカエルを狙い、私は未見ですがマムシもいる様で「マムシ注意」の看板はあります。
まさに「桃源郷」の様な場所なのですが、色々な季節に、しかも何度も足を運んでいるにも関わらず、実はこの付近でカスミサンショウウオの卵嚢を一度も見たことがありません。少し離れた場所(渓流域)で、ヒダサンショウウオの卵嚢は見たことがあります。ハコネサンショウウオもこの近くには棲息しているそうです。それなのに…。
雑木林と田の間に、細いながらも舗装道路(農道?一般道ではない)が通っていること。斜面の水路なので、水の流れが早いことなどが、カスミサンショウウオのいない理由として考えられますが、流れには溜まりがあってドジョウやサワガニなどもいますし、雑木林から直通の谷津田(上写真)もありますし、舗装道路にイモリのDORが見られることもあるので、(イモリでも道を跨いで移動しているぐらいなので)いないはずはないと思うのですが。
ま、単に私が発見できていないだけなのかもしれません…。来年は念入りに探してみます(^_^;)
手前の草に、ばっちりピンが合ってしまっているので見づらくてすみません。この辺りに無数にいるカエルを写してみました。
歩いていると、草叢から次々ピョンピョン飛び出すので、なかなかシャッターチャンスに恵まれません。アカガエル科のカエルは、アオガエルやアマガエルと違って、ジャンプ力があって俊敏なので難しいです。とは言え、アオガエルはシャッターチャンスどころか目にするチャンスが少ないのですが…。
結果として、ダルマガエルらしい個体の写真は、これ1枚しか撮れませんでした。背中の隆条(イボ)が少なく、斑紋がバラバラの個体です(水曜スペシャルみたいで、すみません)。
この辺りの(この時期の)カエルは、トノサマらしいトノサマとか、ダルマらしいダルマというのがいなくて、と言うか私に見分ける技量がないので、有り体に言えば「どっちか判らん」。孤立した生態系なので、交雑個体もかなりいると思います。
ただ、一応、ダルマガエルの棲息地にはなっていますので「新発見!」ではありません(ここが水曜スペシャルとは違う!)。
この個体は、ピンは合っていますが、トノサマっぽいなぁ。
背の斑紋は微妙だし、隆条は中途半端だし、背中線は不明瞭で、肢は長くもなく短くもなく…。まあ、まだ若い個体みたいだし。
ひっくり返して腹の模様を見れば判るのかもしれませんが、捕獲に失敗したので、ここでは一応、トノサマガエルかダルマガエル。またはその交雑種ということにしておきます。
ダルマガエルは、絶滅したとか、絶滅寸前だとか、ある地域では絶滅したとか、色々取り沙汰されています。トノサマガエル、トウキョウダルマガエル、ダルマガエル(名古屋種族と岡山種族)
と分けられていたものが、いやナゴヤダルマガエルとダルマガエルに分けるべきだ!とか、分類上も何だか様々議論されている様なので、素人の私には何が何やら(^_^;)
この辺り、トウキョウサンショウウオだ!いやオワリサンショウウオだ!やっぱりカスミサンショウウオの東海地方個体群だ!の世界に共通する様な気がします。
名古屋の学者って…。いや、止めておきましょう(^_^;)
(田圃ネタだけに我田引水というオチはピッタリだったのですが)
ダルマガエルの岡山種族(またはダルマガエル)は、瀬戸内海地方だけに棲息し、元々孤立した個体群なので数は少ない様です。この辺りに棲息しているダルマガエルは名古屋種族(またはナゴヤダルマガエル)だけです。
ちょっと前までは、そこらの田圃や湿地に普通にいて、むしろトノサマガエルの方が少ないし、格好良いので、私が子供の頃には「何だよ、またダルマかよ」と、ありがたくも何ともないカエルだったのですが、今や全棲息地的に激減しているそうです。圃場整備や、田圃そのものの減少がその要因です。
尚、関東平野と仙台平野にはトノサマガエルやダルマガエルは棲息しておらず、トウキョウダルマガエルのみ棲息しているそうです。正確に言うと、トノサマガエルと呼ばれているトウキョウダルマガエルと、トウキョウダルマガエルと呼ばれているトウキョウダルマガエルの、都合1種類です。
この近辺の田圃には、なんとニホンイモリがウロウロしています。って、イモリが田圃にいるのは珍しくも何ともなさそうですが、実は水路ではなく田圃の畔内でイモリを見たのは、私、初めてでして。
この写真の個体は♀(多分、中間種族)で、腹がパンパンに膨らんでいました。
ウジャウジャいるオタマジャクシを、しこたま食べたのか、それとも抱卵していて産卵のために訪れているのか。どちらかよく判らないので、産卵のために訪れたらオタマジャクシがたくさんいるので、しこたま食べた個体、ということにしておきます。
イモリが田圃の中を、ノッソリノッソリ歩いている姿は笑えます。動きはトロいです。近くで騒ぐと必死で逃げていくのもいるのですが、また泳ぎの遅いこと遅いこと。オタマジャクシと競争しても、そう毎回勝つという訳にもいかないでしょう(^_^;)
とかく邪悪で貪食なイメージで捉えられがちですが、本当は愛すべき生き物ですよ。しこたま食べたと言っても、せいぜい4、5匹だろうし。
イモリが普通に田圃の中をノソノソ歩ける環境だから、しかも2月ぐらいでも水は張られていますから、カスミサンショウウオがいれば、必ずここへ繁殖に訪れるはずなのですが、2月に来たときも3月に来たときも、私には卵嚢が発見できませんでした。
「産卵するなら、この田圃」という場所を見て回ったのですがねぇ。読みが甘かったのか。
逆に、カエルやイモリやヘビなどの生物層が濃すぎるために、サンショウウオの産卵には向かない場所なのかもしれません…。
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