Deca-J有尾目部会

野生のカスミサンショウウオを見てみたい(06.03.08)

私の住んでいる場所からそう遠くない場所に、カスミサンショウウオがまだいるらしい。
「野生のカスミサンショウウオを見てみたい」
そう思うまでにさほど時間は掛かりませんでした。

そもそも野生のカスミサンショウウオは西日本の各地に昔からそっと生息しており、中々人の目に触れる事はなくとも、珍しい生き物では無かったのです。
しかし、人の暮らしの利便性や経済活動の副産物としての開発が、彼らの暮らす場所を奪い、彼らはこの世界からどんどん姿を消しつつあります。(環境省レッドデータブック、絶滅の危惧される地域個体群に指定されています)
だからこそ、未だ生き残っている彼らの存在を多くの人に知ってもらいたい、無闇に彼らの生きている環境を無くしてしまわないで欲しい、その想いから私の近況に棲む止水性サンショウウオ、カスミサンショウウオ低地型の繁殖地と繁殖状況を報告します。

卵嚢を見つけました

こちらの里山の中に幾つかの繁殖地の報告があります、去年も一昨年も繁殖が確認されていますので、今年もきっと・・・。
しかし、すぐ傍で道路の建設工事が行われています、建設に携わる企業からの説明ですと、環境に充分な配慮を行っているとのコメントがあります。(勿論現時点でその配慮がどの程度の実効性を持つのかは分かりません)

工事現場の横を通り抜け、細いぬかるんだ道の奥に、カスミサンショウウオが繁殖を行っているのではないかと、前々から私の睨んでいた湿地があります。
ここへ毎週通う事一ヶ月、今年は寒くなるのが遅く、また急に寒くなったり暖かくなったり、ひょっとして今年はこの場所は繁殖を行わないのであろうか? 疑念を振り払いつつ、湿地の奥へ足を踏み出すと・・・。
見つけました、あっさりと池(水溜り?)の中、目の前数メートルの水中に卵嚢が数対(バナナ状の袋を通常2つセットで産みます)あります。
その後、水中を目を凝らして探した所、数箇所に卵嚢を発見、一箇所は落ち葉の下、池の縁から手が届きそうです。
そっと水中の落ち葉を動かした所、木の枯れ枝に卵嚢が沢山付いていました。


孵化後の餌は何を食べるのだろう? 上陸後はどうなるのだろう? 疑問は尽きません。いろいろ水をすくったり写真を撮ったりしていたところ、鬱蒼としたこの湿地へ真っ直ぐと近づいてくる人影があるではありませんか。しかも、挨拶もそこそこ、「サンショウウオの卵ありますか?」と聞かれました(^_^;)

なんと、この方は、この辺りのカスミサンショウウオの研究と保護を行っている方で、私が以前からメールでお話を伺っていた方でした。
ここで会ったのは全くの偶然なのですが、カスミサンショウウオについてのお話を直接伺う事が出来ました。
この地にも移入種であるアメリカザリガニが入り込み、カスミサンショウウオの繁殖の妨げになっているであろう事。近くの工事の影響の程度によってはここは危機的な状況に容易く陥るであろう事。等々。
その後、池の中、手の届かない場所にある卵嚢を探しつつ、この池の奥の湿地にも去年卵嚢が一対見つかっていることを教えていただき、ご一緒しました。池の中を歩いて(^_^;)

成体もいました

池から上陸し、湿地を10mほど進んだ場所に、小川の様に水の流れる場所があります。
「去年、この倒木の下に卵嚢が・・・。今年は無いかな?」
血眼になって探す二人の目前に…。ありました。卵嚢です。しかも倒木の真下の見えない場所に更に沢山の卵嚢がありました。

今年は池の中も含めて、かなり産卵の多い年だそうです。この様な場所だと、卵嚢の近くの水中によく、♂のカスミサンショウウオがいるとの事で、良く見ると、これまたあっさりと、すぐそばにいました。
以上、カスミサンショウウオ繁殖地での野生種との初遭遇でしたが、この場所は以前からカスミサンショウウオのみならず、自然環境その物の地道な保護活動が行われているにも関わらず、環境の悪化(工事だけではありません。移入種もアメリカザリガニだけでなく、サンショウウオ成体を捕食するアライグマの報告もあり、それらしい糞や足跡の痕跡もありました)で最早ギリギリの繁殖域である印象を拭えませんでした。

今回の報告は以上ですが、以後折を見て、この繁殖地での成体の上陸までの様子を観察しようと思います。

カスミサンショウウオに関する蘊蓄はサンショウウオ/カスミサンショウウオを、ご覧ください。