十脚目通信

アンダマン海のオカヤドカリ

○南の島へ行ってきました
今回の調査範囲の地図当Site立ち上げのそもそもの発端である黒潮調査(北赤道海流圏オカヤドカリ分布状況調査)とは、やや趣旨・調査範囲ともずれますが、インド洋アンダマン海に浮かぶ南の島へ行ってきました(2006年8月)。

編集後記の様なものを冒頭から書くのは申し訳ないですが、Tシャツ一枚に短パンはいて、ウエストポーチに持ち物は、パスポートと幾許かのタイバーツと、デジカメ、ふぉっとっと、ミネラルウォーターのみ。移動手段はトゥクトゥク(軽トラの荷台に屋根とシートを置いただけのタイの簡易タクシー?)と小型のモーターボート。
それなりに楽しくもありましたが、現地はちょうど雨期。頻繁にスコールが発生し、しかもモンスーンが吹き荒れ波高く、まだギリギリ30代(だった)とは言え、長年の重労働と生活苦と不摂生でヨレヨレになった中年男には、多少辛い経験でもありました。
黒潮調査実現の暁には、もう少しマシな調査計画を立てたいと思います。
○インド洋に分布するオカヤドカリの種類はよく知らないので
全ての海岸を見回ったわけではありません。ほんの一部の海岸。それも普通にリゾート化されたビーチ。要するに我国沖縄の、ナキオカヤドカリ Coenobita rugosus やムラサキオカヤドカリ Coenobita purpureus が棲息している様な場所を見て回りましたので、インド洋に広く分布すると言われるオオナキオカヤドカリ Coenobita  brevimanus を見ることはありませんでした。またオカヤドカリ Coenobita cavipes も明確にそれと判断できる個体には出会えませんでした。
結論から先に言う様ですが、数十匹のオカヤドカリを無作為に手に取り確認しましたが、(当然ながら)ムラサキオカヤドカリは一匹も見付かりませんでした。
いろいろな棲息環境
アンダマン海のオカヤドカリは、我国のオカヤドカリと非常に似通った棲息環境で暮している様です。珊瑚礁の白砂(珪砂)のビーチの外れにある海岸林(ビーチの砂の上に棲息しているのではない点も我国同様)で、岩や倒木の隙間、土に掘られた穴、崖などに群居しています。
棲み処の穴は、自ら掘ったものか、あるいはカニ等が掘ったものかは不明ですが、個体数に比べて安住の空間は少ない様で、そこかしこで巣穴の取り合いが見られました。ただし、仲良く同じ穴に入っているものも多数見られました。

="たまにビーチをうろつく"餌にありつくため、あるいは新しい宿(貝殻)を手に入れるため、または海水等を補給するために、昼間でも数匹がビーチの砂の上を歩いている点も、我国のオカヤドカリと同じでしょうか。

オカヤドカリの行動を決定するセンサーは、昼夜の区別または明暗ではなく、潮の干満によるものだと聞いたことがあるので、「オカヤドカリは夜行性」と巷間言われることについて、筆者は常々、疑問を持っていましたが、なんとなく謎が解けた様な気がします。要するに人間等、外敵の少ない海岸では昼間でもオカヤドカリはうろうろしているのでしょう。実際、この海岸(メインビーチは東洋人で賑わっています)でオカヤドカリが見られたのは、人の寄らぬ外れの外れの岩場の方でしたから。

紛らわしくないこともない海岸にいる個体は、何故かどれも小さめの個体(我国では、所謂SサイズとかMサイズと称して売られている様なサイズ)が多く、また海岸の岩場には上陸したばかりかと思われる個体(我国では、ベビーヤドとかSSサイズと称して売られているサイズ)が散見されました。
海岸のオカヤドカリたちは、概ねはアマオブネなどの丸っこい貝殻に入っています。
海岸には、椰子の実やココナッツ(?)、何かの種の様なものが散在していて、オカヤドカリたちが背負っている貝殻と形状が非常に良く似ています。まさか擬態というのは考え過ぎでしょうが、双方の大きさ次第によってはかなり紛らわしく見えます。
結局、ナッツの下に潜り込んでいるオカヤドカリは、ナッツごとガサゴソ動くので、擬態にも何にもなっていないどころか、却って見付かりやすいのですが、人間以外の外敵、例えば空を飛ぶ鳥などから見れば、充分にカモフラージュになっているのかもしれません。
とにかく、大量消費商品として消耗品以下のムシケラ扱いを受けない土地では、オカヤドカリは悠々と暮している様です(タイでもペットを飼う風習は我国以上に強いのですが、オカヤドカリに関しては、土産物屋店頭のクリスタルの置物しか見ませんでした。犬や猫も、私が見た限り、繋がれているものは一匹もなく、それでいて勝手にうろうろしている犬や猫を追い払う様な人種も全く見られませんでした)。
○アンダマン海のオカヤドカリの種類は?
ナキオカヤドカリらしい個体インド洋に分布するオカヤドカリの種類については、筆者は知らない(し、純粋な知識欲としてしか興味もない)ので、この南の島のオカヤドカリたちが何者なのかは断定できません。
色は、白、灰色、赤、ピンクなど様々。海岸林の中へ行くに従って、大きいサイズのオカヤドカリも見られる様になります。タイにもアフリカマイマイが移入しているらしく、その貝殻を背負ったものも見られました。
各サイズ、各色のものを数十匹単位で手に取って観察してみましたが、ほぼ全ての個体の左大鉗脚に、毛束列と斜向顆粒列が見られ、眼柄下部に暗色の斑点(線=所謂、泣きボクロ)が見られたので、恐らくは我国で言うナキオカヤドカリ、またはそれに近い仲間だと思います。冒頭で述べた様に、ムラサキオカヤドカリは発見できませんでした。
色も大きさも様々でしたが、我国の南の島の海岸で異常に大量に見られる“白系アーマン”(爆)は、アンダマン海に浮かぶ島では希少でした。グレーやアイボリー、あるいは白黒の斑等の個体は多数見られましたが、「こんなに真っ白なのは珍しい」と呼べるものは、10匹に1匹程度と言ったところでしょうか。
むしろ“千匹に一匹”とやらの「こんなに真っ赤な個体は初めて見ました」な個体は、この島では“3匹に1匹”程度のレア度でした。
尚、白系も赤系もピンク系も、10匹中10匹が鳴く“ナキオカヤドカリ”であって、10匹中10匹が鳴く“ムラサキオカヤドカリ”ではありませんでした。

ところで、筆者の知る限り、ムラサキオカヤドカリの小型個体(SとかMとか称するもの)は、押し並べて“白系アーマン”なのですが、しかもムラサキオカヤドカリは我国で最も多産するオカヤドカリなのですが、一部の商業ルートで“白系アーマン”が珍重されているのは、非常に疑問です。
ひょっとして「尋常ならざるルートでの価値観が?」と思わなくもないのですが、また知らない人に「業者批判ばっかりするSite」とデマゴギー流されそうなので、深く追求するのは止めておきます(^_^;)
○赤系アーマン
真っ赤な個体こんなに真っ赤なのは初めて見ました〜〜!ということはありません。普通に海岸や店頭で見られるナキオカヤドカリと一般です。
アンダマン海に浮かぶ島でも、さほど珍しくない頻度で、この赤いナキオカヤドカリに出会うことができます。
ただし、ここでは同じ赤い色でも、ちょっとナキオカヤドカリとは違った特徴を持つオカヤドカリも見られました。そのことについては後編で書こうと思っていますが、今のところ、後編を何時アップできるかは目処が立っていません。
尚、後編には、こっそり入ってきて、情報を無断で利用しようとする連中にとって都合の良い内容が含まれる可能性が高いため(と言っても、まだ草案ですが)、パスワード制限する予定です。
会員・ML会員の皆さまには、MLでパスを流しますが、それ以外の方にも「お問い合わせ」があれば、パスワードをお報せする予定です。それを機に何らかの勧誘や運動を強要することはありません(と言うか、私は何の活動も運動もしとらん!)ので、善良な一般常識をお持ちの方は、ご遠慮なくメールしてください。
但し、今後、筆者がパソコンに触れる機会は限りなく0に近くなるため、素早い対応はできかねますので、悪しからずご了承ください。
−後編に続く−
このレポートの写真には、『ふぉっとっと』を使用して撮影しています。
ふぉっとっとは、マメチ・プロダクション(by さとう俊氏)の実用新案登録済製品です。

ヤドカリ・オカヤドカリに関する蘊蓄はDecapediaをご覧ください。

オカヤドカリ飼育に関するFAQ」と「オカヤドカリ飼育に関し、判明している事実」もご参考に。
ネット上に飼育情報が氾濫していて迷っている方は「オカヤドカリのトンデモ飼育法」をご参照ください。