ヤドカリ/ムラサキオカヤドカリ のバックアップ(No.18)


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[編集]ムラサキオカヤドカリCoenobita purpureus

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他のオカヤドカリ属と同様、熱帯域の陸上に棲息。
ナキオカヤドカリに非常に似る。即ち鉗脚上縁の毛束列と左鉗脚の掌部外面の斜向顆粒列が(ナキオカヤドカリを除く)他種との顕著な違い。眼柄の断面は著しく扁平する。
色は白、薄い青、スミレ色、オレンジがかった紫等バラエティに富むが、ある程度の齢に達した個体は概ね紫色になる。弱齢個体の体色は概ね白。体色だけでは本種とナキオカヤドカリの区別はつかない。眼柄下部の暗色線の有無によって見分ける。
写真の個体は、観光地の砂浜で見付けたものだが、宿(貝殻)から飛び出してしまっている。一般に飼育下での貝殻脱落は衰弱しているか脱皮失敗等で、貝殻を支えるための第4、第5脚が上手く機能していないことが多く、そういった個体の致死率は高いのだが、天然下では、外敵(主にヒト)に襲われて貝殻を捕まえられた時等に、貝殻を残してスタコラサッサと逃げる場合がある。
貝殻を早期に見付けられれば生き残れる可能性は高いが、強い陽射しの元、身体が乾いてしまう前に適当な貝殻を見付けられる可能性はかなり低い。

ナキオカヤドカリと同様に発音器を持つため「鳴くオカヤドカリ」として有名。一般にオカヤドカリが鳴くのは、昆虫やカエル等のメーティングコールとは意味合いが違い、むしろリリースコールか威嚇音に近いものと思われる。外敵に襲われたりストレスを受けたり不快な時に鳴く様だ。
沖縄諸島が主な棲息域だが、小笠原諸島でも見られる。本州の一部でも越冬が確認される。世界最北限に棲息するオカヤドカリとして貴重な種。

我国で最も多産するオカヤドカリで、個体数は多い。但し、開発等による棲息環境の減少・悪化が深刻な影響を与えている可能性がある。一説には30年以上生きると言われ、大量に棲息していても幼い世代が増えていない可能性が高い。
繁殖は海で行われ誕生時はゾエアとして放出される。やがてグラウコトエとなり貝殻を背負って上陸してくるのだが、放仔・上陸に適した環境が激減していることに加え、棲息地と繁殖地の往来を妨げる要因が増大している。

市場にはナキオカヤドカリと共に大量に流通している。昨今の俄ブームのためか小型個体の流通が著しく増えた(オカヤドカリの採取制限はt数による=小型個体の方が多数採取可能)。このことが上記環境の悪化と相俟って、数年後には急激に減少する恐れもある。

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[編集]参考情報

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[編集]参考情報2

未だに本種ナキオカヤドカリを「珍しい鳴くオカヤドカリ」と称し、レア感を煽っている業者が在る様だ。中には種の区別なく“鳴く”ものを“ナキオカヤドカリ”と僭称している噴飯物の業者まで存在する様だ。
この手のインボイス名の誤用・乱用は、無知ゆえの過失ではなく非良心的な業者特有の古典的詐称である場合が多いので、消費者は騙されないようにしたいものだ。

我国の市場に流通するオカヤドカリは、ほぼ90%以上(正規ルートなら限りなく100%と言っても差し支えないだろう)がナキオカヤドカリムラサキオカヤドカリなので、“鳴くオカヤドカリ”は珍しくも何ともない*1。また「ナキオカヤドカリの中でも鳴くのは数匹」等と、あたかも“能力の優劣”の如く歪曲した表現も存在する様だが、ナキオカヤドカリであってもムラサキオカヤドカリであっても、鳴くシチュエーションが稀であるだけで、個体毎の差異では有り得ない。
ちなみに、オカヤドカリが鳴くのはメーティングコールではなく、威嚇または悲鳴に近い。

・雄の強引な繁殖行動により雌が悲鳴をあげている。
・繁殖欲求が高まり雄がイライラしている。

この様なケース以外で鳴く場合は、貝殻の奪い合いであるケースも含め、飼育環境の見直しが必要だろう。



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*1 鳴かないオカヤドカリで市場に出る可能性のあるものはオカヤドカリコムラサキオカヤドカリであり、いずれも流通量は少ない。