カニ/マメコブシガニ のバックアップ(No.2)


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[編集]マメコブシガニ(Philyra pisum

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我国での自然分布は岩手県以南~奄美大島まで。内湾の砂泥底、砂礫底の干潟に棲む、甲幅2cm程の小さなカニ。コブシガニ科のカニは原始的な形態を残したカニで、アサヒガニほどの知名度はないが前後に歩くことで有名。
本種は潮干狩りをする様な場所に棲息し、鉗脚で砂の中を探りながら少しづつ前へ進み、小さな二枚貝(アサリやイガイ等の稚貝等)や砂中に潜む小さな環形動物(ゴカイの仲間)を捕食している。死んだ貝の肉も漁る干潟のスカベンジャー的存在。

小さなカニで動きも異常に鈍く、素早く泥の中に潜る様な器用さもないため、外敵が近づくと潮溜まりの中でジッとしてやりすごすか、追いつめられると死んだふりで誤魔化そうとする。よくこれで太古から生き残ってこれたものだと思うが、最近では潮干狩り用のアサリの種苗放流に混ざって分布域を広げているという説もあり、失われゆく干潟の片隅で細々と生き残ってきた本種にとっては、皮肉な結果ともなっている。

繁殖期は6~8月で、5月ぐらいから干潟では♂が♀を後ろから抱え込んで、一緒に前へ歩く姿がよく見られる。

干潟のカニとは言え、泥に巣穴を掘るタイプではないので、海水魚が長期飼育可能なマリンアクアリウムであれば飼育は容易。ライブロックのレイアウトを崩す様なパワーもなく、魚を襲って食べる様なこともないので、おとなしい魚となら混泳も可能。磯のヤドカリとの同時飼育も全く問題はない。

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[編集]飼育について

マメコブシガニといえば、ファミリーで潮干狩り等へ行った際の、子供の格好の遊び相手になる。子供が「家に持って帰りたい」と言い出すこともあるだろう。
この場合は干潟のカニとは言え、泥に巣穴を掘るタイプではないので、特に大掛かりな飼育設備を使用しなくても、とりあえずならプラケースで飼育することが可能。

  • 中サイズぐらいのプラケースを使用。(¥1,000ぐらい)
  • 2センチぐらい底砂を敷く。細かい砂が良いが、大磯砂でも熱帯魚用のセラミックサンドでも川砂でも海砂でもサンゴ砂でも何でも良い。
  • 陸には上がらないので、石等を置く必要はない。
  • 水は、人工海水を、カルキを抜いた水に溶き、比重計の目盛が1.020以上1.023以下であることを確認してから入れる。ケースの高さによるが15~20センチぐらいまで入れた方が良いだろう。
    • 人工海水は海水魚を扱っているペットショップで購入可能。最近ではAmazonにも複数あるので、入手は容易。
    • 比重計も同様。
    • 食塩(粗塩や、天然塩や自然塩と商品名にうたっているものも含む)を水に溶いても海水とは全くの別物なのでNG。比重:濃度も違うので一時的な代用も不可*1
    • 比重計の浮きに気泡が付いていると海水濃度が正しく測れないため、比重計に作った人工海水を入れ、10分ほど置いてから目盛を確認すると良い。
  • エアポンプで海水中に空気を送ってやる。ホースの先はエアストーンでも良いが、水作等の投げ込み式のフィルターに繋ぐのも有効。
    • エアポンプや水作もペットショップやAmazonで入手可能。
    • 海水にエアポンプを使うと塩ダレが生じるので、電化製品やコンセントタップの近くに置くのは止めた方が良い。
    • エアポンプのコンセントタップは飼育ケースよりも高い場所に置く。無理ならコンセントコードをU字に垂らし、コンセントタップに直接水が垂れない様にする。
  • 餌は1~2日置き。夏場や冬場は1週間に1回程度。茹でて冷凍しておいたアサリ等を少量刻んで与える。食べ残したものは速やかに取り出すこと。
  • 水は季節によるが、一週間置きに換える。水作等を使用していれば2週間置きの換水で概ねはOK。但し換水とは別のタイミングで、1か月に一回程度、濾材(スポンジ)を洗う必要がある。

但し、河口の干潟にも棲む様なユビナガホンヤドカリ等とは違い、水質の悪化には弱いタイプの生き物で、食性も肉食のため水を汚しやすく、通常のマリンタンクへ早期に移行することが望ましい。
マリンタンクの作り方や硝化バクテリアの働きについて興味があれば、「海水魚飼育」でGoogle検索することをお薦めする。(字数が多くなりすぎるので、ここでは触れない)



*1 詳細はオカヤドカリのトンデモ飼育法「塩の話」を参照のこと