カニ/イソクズガニ のバックアップ(No.9)


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[編集]イソクズガニ(Tiarinia cornigera

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温帯〜亜熱帯の岩礁磯に普通。筆者は日本海側では見たことがない。
転石の下や岩礁の割れ目等に棲み大抵は隠れているが、その擬態能力に自信があるためか、よく潮溜まりに出て来て蠢いている。動きは緩慢なので、発見さえ出来れば容易に捕獲可能。甲部全体と、鉗脚を除く脚部背面に密集した毛束を持ち、それだけでも藻屑か何かよく判らない生き物だが、毛先が鉤爪状で、そこに文字通り磯屑(海藻やゴミや何だか判らないもの)を片っ端からくっつけて完璧な擬態を行っている。
見た目はかなりグロテスクで生態も変わったカニだが、実はズワイガニに近いカニだ。味については不明。体も小さいので、まず食用にはしないと思われるが…。
タイドプールをじっくり観察しているとすぐに発見できる。ジッとしていると藻屑かゴミの様で、確かにタコや魚等の天敵には見付かりにくいかもしれないが、残念ながら人間にとっては非常に発見しやすい。もっとも決して綺麗なカニとは言えず、恐らく商品価値としても低いと思われるので、それはそれで良いことかもしれない。

海水魚が長期飼育可能なマリンアクアリウムであれば飼育は容易。ライブロックのレイアウトを崩す様なパワーもなく、魚を襲って食べる様なこともないので、おとなしい魚となら混泳も可能。磯のヤドカリとの同時飼育も全く問題はない。
水槽内のゴミやら藻屑やらを、片っ端から背中にくっつけて、水槽内では却って目立つこともある愉快なカニ。食性は、植食性の強い雑食性と思われ、特に専用の餌を与えなくとも長期間水槽内で生きていると、良いことずくめの様だが、唯一の欠点は海藻を植えたマリンタンクには向かないこと。
フェザー等の大量に繁茂した水槽ならともかく、これから海藻を育てて行こうという場合には、海藻が育つ前に片っ端から千切られて背中に貼り付けられることを覚悟した方が良い。

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[編集]補足

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写真の個体はイソクズガニ(Tiarinia cornigera)と思われるが、筆者はツノダシイソクズガニ(T.angusta)との見分けに自信がない。ツノダシイソクズガニは額角に3対のトゲがあると言われているが、このカニを正面から撮影しても、何処が額角で何処をトゲと言うのか、何が何だか全くよく判らない(写真をクリックすると拡大)。
今まで、何十匹というイソクズガニを採取し、手に取って腹側から(よく動く)額角を観察したが、残念ながら一度として見分けられた例がないので、ここではイソクズガニ(Tiarinia cornigera)としたものの、我国で最も多産するとも言われるツノダシイソクズガニ(T.angusta)である可能性を否定しない。

鉗脚が斑で、毛束がなくツルツルしているということは、写真でお判りいただけるだろうか。