エビ/ウチダザリガニ のバックアップ(No.7)


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[編集]ウチダザリガニ(Pacifastacus leniusculus

trowbridgii.jpg

北米原産の外来種。和名の由来は本種の帰化同定の際、北海道大学の内田亨教授の標本が役立ったためと言われる。尚、この時点での学名はPacifastacus trowbridgii
昭和初期より食用として各地に放流されたとされるが、何処にどの程度放流され定着したかどうかは不明。現在は北海道各地と福島県で定着が確認されるが、これらの個体は1930年(昭和5年)、ニジマスの餌としてオレゴン州から輸入、摩周湖に放流されたものが先祖と思われる。福島県の個体は北海道の個体が近年になって密放流されたものとされる。
また滋賀県(淡海湖)にはタンカイザリガニが棲息し、同定時にはPacifastacus leniusculusの学名が充てられたが、その後ウチダザリガニの亜種とされ、ウチダザリガニの学名をPacifastacus trowbridgii trowbridgii、タンカイザリガニの学名をPacifastacus trowbridgii leniusculusとした様だ*1
現在ではこの二種に顕著な種の違いは見られないため、学術的には同種とされ、学名は両種ともPacifastacus trowbridgiiとなるはずだが、どうやら本家アメリカの本種(Signal crayfish)はPacifastacus leniusculusが基亜種とされている*2様なので、両種ともPacifastacus leniusculusと表記すべきだろう。
尚、滋賀県のものは北海道のウチダザリガニが再放流されたものではない様なので、和名はタンカイザリガニのままである。

つまり、Signal crayfishの和名はウチダザリガニであり、その内、淡海湖に棲むもののみ和名をタンカイザリガニと呼び、学名は両種ともPacifastacus leniusculusであるということになるだろうか。

写真の個体は北海道然別湖のもの。然別湖には1980年代に密放流され、その後10年余りで、佃煮にされるほど棲息していた同湖のニホンザリガニ(絶滅危惧II類(VU))が消滅したと考えられている。
現在、現地では駆除活動が行われているが、その増殖スピードに追いついておらず、同湖に棲息するミヤベイワナ(オショロコマの亜種で同湖の固有亜種)の存続が脅かされている。

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[編集]ザリガニはエビ?カニ?

さすがに最近では「Q. ザリガニはエビですか?カニですか?」「A. エビの仲間です」という、質問者が存在するとは思えないFAQを目にする機会も少なくなったが、ザリガニをエビの仲間とするなら、同じレベルで「カニやヤドカリはエビの仲間です」と答えていることになるので、正確ではない。
世間一般ではエビ・カニ・ヤドカリという風に(このWikiも同様だが)便宜的に3種類に分けているが、系統分類的には、クルマエビの仲間とエビの仲間の二つに大分類された後、エビの仲間の中で、イセエビの仲間、ザリガニの仲間、カニの仲間、ヤドカリの仲間・・・。という様に並列して仲間分けされている。
従って(そんな子供が存在するとは思えないが)、子供に「ザリガニはエビなの?カニなの?」と聞かれた場合は「エビの仲間だよ」等、適当に答えてはいけない。とは言え、「エビの仲間には抱卵亜目と根鰓亜目があってね・・・」等とドヤ顔で説明しても伝わらないので、「ザリガニはザリガニだ」とスマートに教えてあげよう。


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*1 正式な種でも亜種でもない学名表記だからか、この辺り、かなり混乱がある様で、ウチダザリガニの学名をPacifastacus leniusculus trowbridgii、タンカイザリガニの学名をPacifastacus leniusculusi leniusculusと表記するのが今のところの定説の様だ。
*2 Pacifastacus trowbridgiiはSynonymか?