ヤドカリ/タラバガニ

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[編集]タラバガニ(Paralithodes camtschaticus

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和名の由来は鱈の漁場で採れるカニ(鱈場蟹)の意。
食用種としてあまりにも有名なカニだが、正確には異尾下目(ヤドカリ下目)に含まれ、カニよりはヤドカリに近い。近年のDNA解析によりタラバガニ科とホンヤドカリ科が非常に近縁であることが判明している。
我国近海で採れるタラバガニ科のカニ(ヤドカリ)には本種の他、アブラガニ(P. platypus)、ハナサキガニ(P. brevipes)が、属は違うが駿河湾近海で採れるイバラガニモドキ(Lithodes aequispina)が、食用有用種として有名である。
筆者が明示的に食したことがあるのは、タラバガニとハナサキガニぐらいだが、身が甘く非常に美味。

食用種以外のタラバガニ科のカニ(ヤドカリ)では、メンコガニ(Cryptolithodes expansus)、シワガニ(Dermaturus mandtii)、ヒラトゲガニ(Hapalogaster dentata)、イボガニ(Oedignathus inermis)等が知られ、砂泥底、アマモ場、岩礁海岸等に棲むが、いずれも身体が小さい所為か食用とはされていない。

タラバガニ科の特徴は、まずそのカニの様な外見だろう。第一脚は鉗脚となり概ね右鉗脚の方が大きいという北方起源*1ヤドカリの特徴を備えている。第二、第三、第四脚は歩脚となる。第五脚は著しく退化し甲内部に隠れているが、指節は鋏脚になっている。
腹部は他のヤドカリとは違って節構造を保ち、尾肢はない。♀の腹部が不相称であることや腹肢が片側のみにあることなど、異尾下目(ヤドカリ下目)の特徴を備えている。

節足動物門 > 甲殻亜門 > 軟甲綱(エビ綱)> 真軟甲亜綱 > ホンエビ上目 > 十脚目(エビ目)> 抱卵亜目(エビ亜目)> 異尾下目(ヤドカリ下目) > タラバガニ上科*2> タラバガニ科 > タラバガニ属


[編集]タラバガニはカニ?ヤドカリ

さすがに最近では「タラバガニは脚が少ないからヤドカリー!」というトンデモ説を目にする機会も少なくなったが、ヤドカリはカニに比べて脚が少ない訳ではないことを図示しておく。*3

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ちなみにヤドカリは第四、第五脚が貝殻を支えるために使われており、従って外見上は脚が二対少ないという表現ができないこともない。一方で、タラバガニの第四脚は歩脚として体側にマジマジと現れている上、第五脚こそ甲部の鰓室に収納されているものの鋏脚になっていて鰓室の掃除等に使われている。
見た目的にも、特徴的にも、脚の働き的にも「タラバガニは脚が少ないからヤドカリー!」の根拠は全くない。
子供に「タラバガニはヤドカリなの?」と聞かれた場合は、「脚が一本少ないからヤドカリ」等、嘘を教えてはいけない。とは言え、「♀の腹部が不相称であることや腹肢が片側のみにあるからヤドカリ」等と難しいことを言っても伝わらないので、「タラバガニの顔をよく見てごらん。カニよりもヤドカリに似ているだろう。もっとよく見ると、そう、ミトコンドリアなんてヤドカリにそっくりだ!」と優しく教えてあげよう。


[編集]参考情報

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*1 寒海起源とも言う=寒海性のヤドカリの祖先から分化した種。北方起源と南方起源は、それぞれ別の祖先から収斂進化し、似た形質を持ったとする説もある。
*2 2009年に新設。ホンヤドカリ上科からタラバガニ上科に移動。
*3 図は南方系のヤドカリ上科 オカヤドカリオカヤドカリナキオカヤドカリ