カニ/クロベンケイガニ

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[編集]クロベンケイガニ(Chiromantes dehaani

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温帯域の河口域(汽水域)に棲息。アカテガニとほぼ同様の棲息環境に棲み、同所的に群れていることもあるが、本種はアカテガニほど陸棲化が進んでおらず、また塩分依存度もアカテガニより高いのか、河口部では本種の方が隆盛。川や水路から離れるに従って、アカテガニが隆盛になる。
アカテガニベンケイガニが海近くの森や草叢(アカテガニは海から離れた森の中でも)を住み処とするのに比して、本種は河口域を離れることがない(平地部の川等では海水の影響を受ける中流域まで進出することが多い)。必ず水路の近くに棲息し、海近くの田圃の用水路や護岸の石垣等で特によく見ることが出来る。
このクロベンケイガニ(Chiromantes dehaani)とサワガニ(Geothelphusa dehaaniは、我国の稲作文化との関連が深いためか(そのため標本が採取しやすかったためか)、シーボルトが日本から持ち帰った標本や図を元に甲殻類を分類した、ライデン博物館のウィレム・デ・ハーン(Wilhem de Haan)の名が学名に献名されている。
黒っぽい地味な体色で、パッと見では小汚いカニだが、鉗脚が渋い紫色で、よく見ると(個人差はあるだろうが)綺麗なカニ。

体色の点では、アカテガニベンケイガニほどの類似性がないものの、体形的には本種の方がアカテガニに近い。即ち本種の甲外縁には鋭い切れ込みがない。アカテガニとの見分け方は、体色の他、本種の鉗脚基部には粒状突起が散在することと、鉗脚掌部の白い部分の面積が広いことで簡単に見分けが付く。甲部もゴツゴツしているので、すぐに判るだろう。

ペットショップ等で見掛けることはまずないだろう。
食性は植食性の強い雑食で、落ち葉等をよく食べているが、死んだ魚や小動物等も食べているものと思われる。見た目は厳ついがベンケイガニよりも植食性の強いアカテガニと較べても、本種の方がより植食性が強い様だ。
口器の横に溝があり、その溝と脚の付け根に取水孔のある鰓の間を水を循環させて呼吸している*1が、水が古くなってくると粘ついて呼吸しにくくなるため、体ごと水の中に入り新鮮な水と交換する。即ち口から泡を出している時は呼吸が苦しくなっている。
脱皮は完全に水の中で行う。
概ね陸域と真水だけで飼育できるアカテガニベンケイガニに比べ、本種は汽水飼育が基本なので、飼育は難しい部類に入ると言えるだろう。後述するが、陸域中心で飼育するなら難易度は下がる。

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[編集]食性や棲息環境など

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捨ててあるコーヒーのパックにご執心のクロベンケイガニ。
左上に少しだけ見えている脚はアカテガニで、近づくとコソコソ逃げていったのだが、クロベンケイガニの方は紙パックに夢中で全く逃げなかった。
よほどコーヒーが気に入ったのだろうか。
実際、本種は厳つい見た目の割には植食性が強く、カニ釣りの際等、糸の先に着けたスルメには見向きもせず、釣り人が落としたチョコレート菓子を必死で食べる姿や、捨てられたチョコアイスの紙に集る姿も目撃する。
写真の個体はパックに溜まったデトリタスを紙ごと食べているものと思われるが、ひょっとするとコーヒーの臭いに釣られている可能性もある。

本種をベンケイガニとし、ベンケイガニをアカベンケイガニとする記述が時々見られるが、これは商品名としてのインボイス、または観察者や飼育者の便宜的な呼称である。
本種はベンケイガニ科アカテガニ属、ベンケイガニはベンケイガニ科ベンケイガニ属なので、黒いベンケイガニと赤いベンケイガニという理解の仕方はあまり本質を表しておらず、また、時季にもよるが、本種とアカテガニは同所的に見られることが多いが、そういった場所でのベンケイガニの個体数は偶来と言ってよいレベルで少ない。
逆にベンケイガニアカテガニも同所的にみられることもあるが、そういった場所での本種の数は少ない。
この3種は繁殖期を除き、

  • ベンケイガニ=海岸林、山が海に迫っている様な崖や石垣、河口の泥地など。
  • アカテガニ=海岸林~森、河口域の森林など。
  • クロベンケイガニ=海に流れ込む水路や河口域の干潟や護岸、下流域(時に中流域まで進出)の護岸や田圃など。

が、主な棲息域になる。



[編集]飼育について

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半水棲の、例えばクサガメやイシガメの様に、水を張り上陸用の石を置いた様な飼い方がイメージされがちだが、クロベンケイガニは基本的には干潟や湿地等の陸側で生活するカニで、また、少ない水量の汽水飼育は水質維持の難易度がかなり高いため、図の様な飼育環境の方が飼いやすい。
陸棲とは言え、鰓呼吸なので鰓が乾くと死んでしまう。そのため、カニが体ごと浸かれる水場が必要。また脱皮も水の中でないと行えないので、大きめの水場を常に新鮮な水で満たしてやると良いだろう。
水は海水ではなく淡水で良い。時々、ごく薄い人工海水を与えるのも良いだろう。砂は湿りがちの方が喜ぶが、維持管理が大変なので、思い切って乾いた砂で飼う方が楽。カニの健康面には問題がない。
この水量では濾過装置を使っても生物濾過の効果は期待できない。またコンセントのリードやホース等は脱走の足掛かりになりやすいので、水を定期的に換える方法が飼育しやすい。
魚や水棲のカニの様に、水の中で採餌・呼吸・排泄を行う訳ではないので、水はそれほど汚れることはなく、1週間~2週間に1回程度の換水または足し水でキープは可能。
但し、砂は汚れるので定期的な砂の洗浄や交換が必要。筆者は乾いた砂をストックしておき、1ヵ月に一度程度、表面の砂を新しいものと交換している。(取り出した砂は洗って乾かし、ストックしておく)

飼育匹数は、1ケースに1匹が安全。
60cm水槽で、脱皮用の水場を複数設置する、隠れ家を多く設ける等工夫して小型の個体を2,3匹程度なら同居させられるが、1~2年ですぐに大型化する上、脱皮時に水場で食殺された死骸の悲惨さ(臭いもかなりキツイ)はトラウマになるレベルなので、きめ細かく、脱皮の兆候を見逃さず日々のケアができる人か、死骸の姿や臭いにショックを受けないタイプの人にしかお薦めできない。



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*1 甲の側面が網目状になっていて、ここで効率よく酸素を取り込みながら水を取水孔に送り込んでいる