十脚目通信

販売できる天然記念物を巡る大誤解

○はじめに

店頭・通販・オークション等の方法を問わず、譲渡し・譲受けまで含め、我国の市場に流通するオカヤドカリ属の生き物は、ナキオカヤドカリムラサキオカヤドカリ、混じりでオカヤドカリ、稀にオオナキオカヤドカリ。この4種だけです。コムラサキオカヤドカリ、サキシマオカヤドカリが、市場に出回ることは、まずありません。 更に、我国に外国産オカヤドカリが出回るとすれば、それは全て違法です。 つまり、激レア・珍種・色変わり・珍しい色など…。いかなる表現方法が使われていようとも、いかなる大枚をはたこうとも、一般消費者が手にすることのできるオカヤドカリは、ごく一般的な色・形のムラサキオカヤドカリかナキオカヤドカリにすぎないのです。

誤解1:珍しい色のオカヤドカリは希少種なので、販売できないはず?
ノーです。我国のオカヤドカリが希少であるのは、元々は世界最北限のオカヤドカリという理由ですから、その意味では市場に流通するものもしないものも、全て貴重な生き物です。
また、希少種というカテゴリーは、環境省が「絶滅の恐れがある」と判断した種であり、絶滅の恐れがあるものを販売するのは人間としてどうかという議論をさて置けば、珍しいオカヤドカリを販売することに違法性はありません。
オカヤドカリの流通において問題になるのは、(文科省)文化庁のカテゴリーである「文化財保護法」によるものです。つまり、希少であろうとなかろうと、そんなものは全く問題にはならず、文化庁が許可した業者が、許可した方法によって採取したオカヤドカリが、市場に流通するのは、種の如何を問わず合法なのです。
但し、採取許可されている業者は、沖縄本島のみに3、4名存在するのみです。採取方法は非常に単純な方法で、ムラサキオカヤドカリやナキオカヤドカリとは棲息環境の異なる他のオカヤドカリが採取される可能性は低いのです。それでも時期によってはオカヤドカリやオオナキオカヤドカリが採取される可能性はありますが、元々我国内にほとんど見られない上に棲息環境も繁殖時期も全く異なるコムラサキオカヤドカリやサキシマオカヤドカリが、市場に流通する可能性はありません(コムラサキオカヤドカリについては人為的に無効分散化させられたものが“合法的に”市場に出回ったことがあります)。
例え、無効分散のゾエアが(グラウコトエになって)沖縄本島に到達する珍種がいたとしても、それが合法的に市場に流通する可能性はまずありません。もちろん船のバラスト水に混じって希少種(のゾエア)が沖縄本島に到達し(しかもそこで経年成長し)、億に一つの偶然が重なり採取されて、市場に流通した等という噴飯物の理論は到底成り立つものではありません。

改訂レッドリストに関するDeca-Jの見解はレッドリスト見直しに関するDeca-Jの見解をご覧ください。

※:採取方法については、信頼できる筋からの情報を元にしていますが、その真偽について現在、担当庁に
  確認中です。確認が済み次第、公開したいと思うのですが、何分、件の担当庁は善良な一般市民の要望
  や質問は黙殺すると決めている様子なので…。
※2:採取方法について、別の信頼できる筋からの情報を得ました。私が考えていたよりもっと単純な方法でした。
◇ そこで一般消費者の方にお願いがあります
普通に市場に流通しているムラサキオカヤドカリやナキオカヤドカリも、全て貴重な生き物ですから、レアモノ狙いは止めてください。また“珍しい色”と称して売られているオカヤドカリも、その大半はムラサキオカヤドカリかナキオカヤドカリであり、成長とともに、また飼育環境によって“普通の色”になることを理解してください。
ちなみに、ムラサキオカヤドカリは小さいときは白・オレンジ・薄紫・茶・赤など、様々な色合いを呈しますが、成長に伴ってムラサキ色が濃くなります。
ナキオカヤドカリの小さいときは、白・紫・青・茶色・赤・白黒斑入りなど、様々な色合いを呈しますが、成長に伴ってグレーが強くなります。
オカヤドカリは、大抵は茶色かグレーです。オオナキオカヤドカリは赤紫〜赤だそうです。
※:本当にレアな生き物をレアモノとして入手される分には、ある程度しかたないのかもしれません。
  が、実際には無駄な消費にしか繋がっていないので、そのことを理解して欲しいのです。
◇ 業者の方にもお願いがあります
この不景気。目先の利益に汲々としなければならないのは、しかたないかもしれませんが、地球の未来、そして業界の先行きのために、長い展望と広い視野を持ってください。いくら担当庁が利権保護主義だとしても限度があります。子供でも疑問に思うような陋劣な商法を繰り返していては、担当庁の沈黙作戦だけでは守りきれない部分もあろうかと思います。
今日日のインターネット全盛時代。お得意の“マスコミ買収デマゴーグ”も最早通用しません。一般消費者が正しく情報を取捨選択できる(非営利の)WebSiteも多数ありますし、既に担当庁とは別の省庁が、かなり厳しく情報監視を行っています。
ほんの一部の狭量な業者のために、(ペット産業)業界全体および我々一般飼育者が迷惑を被る日も、そう遠い未来ではありません。そうなる前に心ある方々による自浄化をお願いします。
誤解2:外国産のオカヤドカリは希少なので、輸入できないはず?
ノーです。よく希少な生き物の輸出入で問題になるのは「CITES(通称ワシントン条約)」で、我国での管轄は経産省ですが、我国に輸入されるオカヤドカリは、特に希少な種類という訳ではありません。
また、最近話題の「外来生物法(我国の環境に影響を与える生き物の移入に関して規制する法律で、管轄は環境省)」でも、外国産オカヤドカリは規制対象となっていません。
外国産オカヤドカリの輸入が禁止されているのは、農水省の管轄による「植物防疫法」。つまり、我国の作物に被害を与える恐れのある害獣という扱いで、全ての外国産オカヤドカリの輸入が禁じられているのです。
植物防疫法は、ホワイトリスト方式。全ての動植物の移入を禁じた上で、特例として一部を許可するという方式を採っています。つまりこの法の(対象となり、しかも)特例リスト化されていない動植物は全て輸入禁止。また販売・譲渡し・譲渡け・陳列・栽培・飼育の全てを厳格に禁じています。
外国産オカヤドカリは、この法の対象である“陸棲節足動物”であり、かつホワイトリストには載っていないため、売ろうが、買おうが、貰おうが、飼おうが、全て処分対象です。ここでいう処分とは、もちろん没収して現地に返す等という生易しいものではなく、没収・殺処分です。
※:ちなみに、外来生物法はブラックリスト方式(明らかに危険性のある生き物をリスト化し、
  規制する)ですが、リスト化の前提として「植物防疫法で規制されているものは除く」と
  いう条件を冠しています。
  これだけ書くと、「さすが縦割り省庁。責任のなすり合いか?」と思えそうですが、実は
  農水省と環境省は、かなり密接かつ柔軟に連携して動いているようです。
  我国の構造改革の流れから取り残され(要するに優先度が低いと誹られてるんですよ)、
  前世紀まんま唯我独尊安穏とこの世の春を謳歌している(つもりの)某庁とはエライ違い
  です。
◇ そこで一般消費者の方にお願いがあります
外国産と銘打ったオカヤドカリは、所持しているだけで違法ですから、買わないでください。また国内にいる種類であり、かつ国産と称しているものでも“珍しい”と付いているものは、違法または密輸である可能性が高いですから、まずは疑ってかかってください。
また、図らずも外国産と思われるオカヤドカリを購入してしまった場合は、他人にばれない様に、こっそりと内緒で飼ってください。レアモノだったとしても個人での繁殖は不可能なので利殖的には価値がありません(要するに再販は不可能です)ので。
※:外国産を飼っていると公言した場合、例え個人が譲受けたものであったとしても、殺処分対象に
  なり、個人宅にも防疫所の係員が訪れます。
  利益にも自慢にもならない個人の都合で、生き物が無駄に殺害されるのはやりきれないです。
◇ 業者の方にもお願いがあります
ことオカヤドカリに関しては、“珍しい”という言葉を冠したものは全て違法です。詐欺、あるいは密漁、あるいは密輸によってしかレアモノを入手することはできないはずで、もちろん、某担当庁以外は、かなり敏感に“レア”というセールストークに目を光らせています。
ほんの一部の狭量な業者のために、(ペット産業)業界全体および我々一般飼育者が迷惑を被る日も、そう遠い未来ではありません。そうなる前に心ある方々による自浄化をお願いします。

オカヤドカリ飼育に関する一般常識については「オカヤドカリ飼育に関し、判明している事実」を、一般常識ではなくオカヤドカリについての疑問点は「オカヤドカリ飼育に関するFAQ」を、ネット上に飼育情報が氾濫していて迷っている方は「オカヤドカリのトンデモ飼育法」をご参照ください。

また、ヤドカリ・オカヤドカリに関する蘊蓄はDecapediaをご覧ください。